太陽光・蓄電池・EVを併用すると何が得か|昼の電気の行き先で決まるメリット
太陽光・蓄電池・EVの併用のメリットは、昼の電気を家庭・蓄電池・EVのどこに流すかで決まります。三口径の金額と月をまたげない制約を計算式で分けて出し、東京3kWのEV充電は年29,762円、蓄電池は年59,466円増えます。
メリットは「昼の電気の行き先」を3つに分けないと決まらない
太陽光・蓄電池・EVをいっしょに持つ話には「電気代が減る」「停電に強い」「CO2が減る」がまとめて書かれがちです。でもこの3つは同じ式から出てきません。電気代の話は昼に発電した電気をどこへ流すかだけで決まり、停電への備えは停電している時間にその電気を使えるか、CO2は同じ電気を買ったとしたらどれだけの排出になるかという、それぞれ別の話です。
まず昼の電気の流れを3つに分けます。
| 行き先 | 何が減る/増えるか | 決まる条件 |
|---|---|---|
| 家庭が昼に直接使う | 買電がそのまま減る | 昼に同時に使える機器があるか |
| 蓄電池に貯めて夜に使う | 夜の買電が減るが、売電収入を失う | 器の上限・充放電効率・夜の使い切る量 |
| EVに充電して走る | 充電電気代が減るが、売電収入を失う | その月の余剰・走る距離・電費・充電効率 |
昼に直接使う分はどの装置も要りません。装置を買う意味は、余った電気をどこへ動かすかの話だけで、動かした先で失う売電収入と差し引きになります。
検索上位に計算式が無いので、数字が全部同じに見える
「太陽光 蓄電池 併用 メリット」の検索上位を数えたところ、メリットの項目を並べる記事ばかりで、削減額を式で出しているページは0件でした。自治体が置いているページも状況は同じです。大阪府は府民向けに住宅用太陽光発電シミュレーションのページを持っていますが、中身は登録された製造者(京セラ・パナソニック)が公開しているシミュレーションサイトを紹介するもので、実際の発電量は気象条件や周囲環境で変動し、算出された値は保証するものではないと注記されています。
長野県の「屋根ソーラー×EVのくらし」のページは、昼に発電した電気でEVを充電し、V2Hがあれば夜はそれを家で使う、という流れを県自身の言葉で説明しています。ここに書いてあるのは電気の流れの形で、金額の式ではありません。このページは、その形に数字を入れます。
同じ家で3つの答えが出る
初期値の家を1つ決めて、3つの口径を同じ表に並べます。前提は東京・気象庁の2025年の月別日射量・1日の使用電力量11.84kWh・昼に直接使う電気4kWh/日・卒FIT後の売電8.3円/kWh・買う単価31円/kWhです。
| 口径 | 入力の形 | 年間の金額 |
|---|---|---|
| 太陽光だけ(装置なし) | 5kW | 得をする額93,272円 |
| 太陽光+蓄電池 | 5kW+名容量9.5kWh・使える割合80%・1日1往復・効率90% | 152,738円(蓄電池ぶんの増分59,466円) |
| 太陽光+EV充電 | 3kW・月1,000km・電費9.99km/kWh・充電効率89% | 充電電気代が年29,762円減る(全部買うと41,854円) |
いちばん下の行は上の2行と金額の単位が違います(家庭の電気代ではなくEVの充電電気代)。同じ表に足し算してはいけません。3kWの家の余剰2,886.75kWhのうち、EVに回すのは1,311.10kWhで、残った1,575.65kWhが蓄電池の受け皿になるからです。装置を全部そろえると、余った電気はEV→蓄電池→売電の順で消化されます。
夏に余った電気は冬に運べない
併用の話が年間合計の式で書かれていると、ここで崩れます。気象庁の東京の月別日射量(全天日射量の月平均、MJ/㎡)を2025年の値で使うと、太陽光5kWの月の発電量は下表のようになります。
| 月 | 東京の1日あたり平均日射量 | 5kWの月別発電量 | その月の余剰 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 10.6MJ/㎡ | 456.39kWh | 332.39kWh |
| 7月 | 21.6MJ/㎡ | 930.00kWh | 806.00kWh |
| 10月 | 8.3MJ/㎡ | 357.36kWh | 233.36kWh |
| 12月 | 8.5MJ/㎡ | 365.97kWh | 241.97kWh |
7月の余剰806.00kWhは、名容量9.5kWh・使える割合80%の器が1か月に放出できる上限235.60kWh(充電するには261.78kWhぶん必要)を超えます。一方10月と12月は、余った電気を全部充電に回しても夜の必要量243.04kWhに足りず、買電が33.01kWh・25.27kWh残ります。夏に余った分を冬に使える前提の式は、この2か月分の不足を埋めてしまいます。
EV充電のページの家(太陽光3kW)も同じです。月1,000kmを走る家のプラグ側の充電量は毎月112.51kWhで一定なので、余剰が149.83kWhある1月は足りて、90.42kWhの10月は足りません。初期値の家で充電を余剰だけで賄えたのは10か月、12か月ではありません。
メリットが潰える条件|売電単価と器の上限
装置を足すメリットは、売る単価が上がると消えます。貯めるのも充電するのも、売れたはずの電気を使う行為だからです。
| 口径 | 分岐する値 | 初期値の家での位置 |
|---|---|---|
| 蓄電池 | 売電27.90円/kWh(=買う単価31円×効率90%) | 卒FIT後8.3円で分岐の内側(年59,466円の増分)、FIT中の24円でも内側(年11,833円)、売電28円で外側(マイナス303円) |
| EV充電 | 売電31円/kWh(=買う単価) | 卒FIT後8.3円で年29,762円の削減、FIT中の24円では年9,178円、売電35円では年5,244円のマイナス |
FITの買取価格は資源エネルギー庁が年度ごとに表で出しており、住宅用10kW未満の2026年度の全期間固定価格の下限は8.3円/kWhです。上の表の8.3円はここで確認できます。卒FIT前でも蓄電池は得になりますが、失う売電収入が24円ぶんになって、増分は5分の1に落ちます。「卒FIT後に効く」と言われるのは、売る単価が下がるからです。
器の上限側は逆で、家での使い切りが足りないと装置を増やしても増分が動きません。初期値の家では取りこぼしの内訳が、夜の使い方が足りずに売った2,402.81kWhに対して、器が足りずに売ったのは72.72kWhです。器を増やすために必要な追加は名容量で0.25kWhぶんしかありません。
国の試算は家庭用蓄電システムについて、業務・産業用の前提で放電深度80%・充放電効率90%・1日1往復・寿命10年〜15年を置いていて、名容量9.5kWhも1台ぶんの推計値です。当サイトの計算はそこを初期値にしていますが、家庭用の公表された一律値ではないので、見積もりの仕様書の実効容量と往復効率に書き直してください。
停電への備えとCO2は、金額の話とは別で数える
停電時の備えについて、長野県のページは、V2Hがあれば昼に発電した電気を夜に家庭で使えること、災害で停電してもEVに貯めた電気を家に供給できることを県の言葉でメリットとして挙げています。向いている世帯としては、FITの買取期間が終わった人や、普段の買い物が中心で長く走らない人を挙げています。ここには金額の条件が入っていないので、電気代とセットで「得」とは書けません。備えとして買うのか、電気代として回収するのかを分けて判断してください。
CO2も口径が違います。EVの計算ページが出している「同じ電気を買ったとしたときの排出量」は、余剰で賄った電気を電力系統から買ったとしたら出る量で、売電に回った分の排出は引いていません。電力のCO2排出係数は公表元によって値が割れるので、係数そのものを並べたいときは太陽光CO2削減量計算を使ってください。
併用するならどの順番か
上の計算を並べると、判断の順番は次のようになります。
- 走る距離が決まっているならEVが先。 EVは月1,000kmでプラグ側112.51kWh/月しか電気を受け取らないので、余剰が毎月足りるかどうかを先に確認できます。2kWの家では月1,000kmを賄えず、年間で余剰1,437.83kWhに対しプラグ側1,350.12kWhと数字上は足りても、月をまたげないので315.88kWhは買電になります
- 夜の使い方が決まっているなら蓄電池が後。 初期値の家の器の取りこぼし72.72kWhが示すとおり、夜の使い切り量の方が器より小さい家では、容量を増やしても増分は千円単位でしか動きません
- 家そのものの昼の直接使用を増やすのが最も安い。 昼の直接使用を4kWh/日から6kWh/日にすると、蓄電池の増分は59,466円から45,422円に減ります。装置なしで動く電気なので、これが一番費用をかけない対策です
金額がそろっても設備費が同じではないので、蓄電池が元を取る年数を出すで寿命10年〜15年の内側に収まるかを確認してください。
計算はこの2ページを同じ入力のまま使えます(共用の月別モデルで、片方の余剰ともう片方の受け皿が必ず一致します)。
- 太陽光と蓄電池の併用シミュレーション:月別の器・夜の使い切り・充放電ロスを通過させた年間増分と三口径
- 太陽光でEV充電シミュレーション:余剰で賄えた分・足りずに買った分・1kmあたりの電気代と失う売電収入
電気代を家計全体で見る話は自家消費率と自給率の違いの解説、太陽光単体で減る額を請求書の段階で見る話は太陽光で減る電気代を出すにあります。蓄電池とV2Hを比べるなら蓄電池とV2Hの違い、EV側の損失はEV充電ロスは何割か、EV充電の単価はEV充電料金計算を使ってください。月別の日射量は日射量データ、売電単価の表は太陽光買取価格データに置いてあります。
出典・データソース
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[meti-distributed-energy-wg-battery] 資源エネルギー庁 電力・エネルギー本部(推計作成:三菱総合研究所)
第2回分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループ 資料4「需要家側蓄電システムの導入見通し・収益性に関する検討」(2026年3月6日)国の試算が家庭用蓄電システムに置いている前提(寿命10〜15年・1台あたり5.5kW/9.5kWh)と、収益を出す式の形(従量料金単価+再エネ賦課金単価−余剰売電単価)の所在
アクセス日:2026-10-18
- B
[nagano-yane-solar-ev] 長野県
屋根ソーラー×EVのくらし|つなぐ 信州屋根ソーラー長野県の「屋根ソーラー×EVのくらし」のページは、昼間に発電した電気で EV を充電し、V2H があればそれを夜に家で使うという流れを、県自身の言葉で説明している。試算の式や月別の数値は載っていない
アクセス日:2026-10-27
- B
[osaka-jutaku-taiyoko-simulation] 大阪府
住宅用太陽光発電シミュレーション/大阪府(おおさかふ)ホームページ大阪府(おおさかスマートエネルギーセンター)の住宅用太陽光発電シミュレーションのページは、登録された製造者(京セラ・パナソニック)が公開しているシミュレーションサイトを紹介するもので、実際の発電量は気象条件や周囲環境で変動し、算出された値は保証するものではないと明記している
アクセス日:2026-10-27
この記事が参照するデータ
よくある質問
- Q. 太陽光・蓄電池・EVは全部そろえたほうがいいですか
- A. 昼に余った電気の行き先が決まるので、そろえるほど余剰を使える先は増えます。ただ順番によって金額の伸び方が違います。東京・太陽光3kW・月1,000kmを走る家なら、余剰からEVに回した分の削減は年29,762円、同じ家で5kWに増やして名容量9.5kWhの蓄電池を足すと蓄電池ぶんの増分は年59,466円です。どちらも「失う売電収入」を引いた後の金額なので、無料の電気が増えるわけではありません
- Q. 併用のデメリットは何ですか
- A. 昼の余剰を奪い合う点です。EVに充電した電気は売れなくなり、蓄電池に貯めた電気も同じく売れません。同じ家(太陽光5kW・東京・売電8.3円・買う31円)で蓄電池なしの得は93,272円、9.5kWhを足して152,738円になるのですが、簡易式で見ると157,986円になります。月ごとの器の上限と充放電ロスをどっちで数えるかで、2つの式の差5,248円が出てきます
- Q. 蓄電池とEVどちらから買うべきですか
- A. 走る距離が決まっているならEV側の余剰消化の方が先に効きます。EVは月1,000kmあたりプラグ側で112.51kWh/月しか電気を使わないのに対して、蓄電池は夜の使い切れる量までしか電気を受け止めません。東京3kW・昼の直接使用4kWh/日の家だと、蓄電池は12か月のうち10か月しか器がいっぱいにならない一方、EVの充電は10か月しか余剰で賄えない。どちらも「足りない月」が残るので、どちらか一方では余剰を使い切れません
- Q. 併用の効果は何年で出ますか
- A. 国の試算は家庭用蓄電システムの寿命を10年〜15年程度と置いているので、年間増分を回収できるかどうかはその年数の内側で比べることになります。このページと計算ページの金額は設備費を入れていない電気代の増分だけなので、購入額・補助金・容量劣化を足して比べる必要があります