太陽光発電は元が取れるまで何年かかる?
太陽光発電は元が取れるまでに何年かかるのか、回収年数の式を4つの因子に分解して試算します。年間維持費・経年劣化・売電単価の二段構成・補助金を入れると、維持費を数えない約11年という答えから何年動くのかが分かります。
標準的な家庭の試算では14年目
東京に5kWを設置した世帯を標準の家として、年間維持費とパネルの経年劣化まで織り込むと、入れたお金を取り戻せるのは14年目です。
| 項目 | 値 | 出所 |
|---|---|---|
| 総設置費用 | 25.5万円/kW × 5kW = 127.5万円 | 経済産業省 調達価格等算定委員会の2026年度想定値(住宅用10kW未満) |
| 年間発電量 | 5,700kWh | 当サイトの発電量試算(東京・5kWの目安) |
| 余剰売電 | 4,200kWh × 14.58円 = 61,236円 | 2026年度の住宅用買取単価を10年で平均(第4節で展開) |
| 自家消費 | 1,500kWh × 33.71円 = 50,565円 | 東京電力 従量電灯B 第3段階の実効単価 |
| 年間の便益 | 111,801円 | 上の2つを足した額 |
| 年間維持費 | 0.30万円/kW/年 × 5kW = 15,000円 | 同上の想定値 |
| 経年劣化 | 0.27%/年 | 太陽光発電協会の国内メーカー実例値(環境省のPDFが紹介) |
便益111,801円から維持費15,000円を引いた年間純便益96,801円で127.5万円を割ると13.2年です。そこに、2年目以降は年間純便益が0.27%ずつ減っていく前提を足すと、累積収支が初めてプラスに転じるのは14年目になります。
13年目の累積収支 = ▲39,901円
14年目の累積収支 = +53,039円 ← ここで黒字化
20年目の累積収支 = +604,585円
「太陽光発電は10年前後に元が取れる」という見出しをよく見かけますが、上の表のどこを緩めるとその答えが出るか、という違いです。このページでは式を因子に分解して、1つ動かすと何年変わるかを並べます。
回収年数の式を4つの因子に分解する
回収年数の式は、書き直すと次の4ブロックです。
回収年数 = 初期投資額 ÷(年間売電収入 + 年間電気代削減額 − 年間維持費)
因子1 初期投資額 = 総設置費用 − 補助金
因子2 年間売電収入 = 売電量 × 買取単価(単価は期間で二段)
因子3 年間電気代削減額 = 自家消費量 × 買わずに済んだ単価
因子4 年間維持費と経年劣化
回収年数を試算したページを並べると、因子1と因子3の扱いはどれも似ていて、差がつくのは因子2と因子4の入れ方です。 維持費は「除く」と明記している試算もあれば、買取単価を1本に固定している試算もあります。だから答えが10年にも15年にもなります。
因子3の「買わずに済んだ単価」が33.71円なのは、自家消費した電気が電気料金の3層をまとめて消すからです。2026年9月分・東京電力従量電灯Bの第3段階なら、電力量料金40.49円に燃料費調整の▲10.96円と再エネ賦課金4.18円を足します。4層のどこが動くかは電気料金の内訳に整理しました。この単価は検針月ごとに変わるので、削減額を家の請求額で確かめたいときは太陽光電気代削減額計算を使ってください。
因子を1つ動かすと何年変わるか
標準の家に、1つだけ条件を変えて入れました。
| 条件 | 単純回収年数 | 維持費と劣化を織り込むと | 20年目の累積収支 |
|---|---|---|---|
| 標準(自己負担127.5万円) | 13.2年 | 14年目 | +604,585円 |
| 補助金30万円で自己負担97.5万円 | 10.1年 | 11年目 | +904,585円 |
| 総設置費用を51万円/kWで計算(255万円) | 26.3年 | 28年目 | 20年目で▲670,415円 |
| 売電単価を1〜4年目の24円で計算 | 9.4年 | 10年目 | +1,375,893円 |
| 売電単価を5〜10年目の8.3円で計算 | 18.1年 | 19年目 | +90,379円 |
| 自家消費量を半分の750kWh/年に | 17.8年 | 19年目 | +111,697円 |
| 年間維持費を0円にする | 11.4年 | 12年目 | +904,585円 |
| 劣化率を0%/年にする | 13.2年 | 14年目 | +661,020円 |
| 点検と交換を実費で年按分(2.68万円/年) | 15.0年 | 16年目 | +368,585円 |
| 同上+劣化1%/年(メーカー保証範囲) | 15.0年 | 17年目 | +224,819円 |
読み取れることは4つです。
- 投資額を動かすのがいちばん効きます。 25.5万円/kWと51万円/kWでは、回収年数が14年目と28年目で2倍ちがいます。見積もりを1社しか取っていない家は、この幅を把握していません。
- 売電単価の置き方も同じ規模で効きます。 1〜4年目の24円で全期間を測ると10年目、5年目以降の8.3円で測ると19年目。同じ家・同じ発電量で9年違います。
- 劣化0.27%は回収年数を変えませんが、総額は変えます。 標準も劣化なしも14年目ですが、20年目の累積収支は56,435円違います。劣化は回収の早さより、合計側に出る因子です。
- 維持費は回収を1〜2年遅らせ、総額を大きく減らします。 点検とパワーコンディショナ交換を実費ベースにすると14年目→16年目、20年目の累積は604,585円→368,585円です。
補助金30万円の行と、年間維持費を0円にした行は、20年目の累積収支がどちらも904,585円で一致します。補助金30万円と、20年分の維持費30万円(15,000円×20年)が同じ金額だからです。「補助金があるから回収が早い」という試算と「維持費を数えない」試算は、同じ30万円を式のどちら側に載せるかの違いにすぎません。
売電単価は4年目までと5年目以降で別物
2026年度に契約する住宅用(10kW未満・余剰売電)の買取は、調達期間10年の二段単価です。
| 期間 | 買取単価 | 年数 |
|---|---|---|
| 1〜4年目 | 24円/kWh | 4年 |
| 5〜10年目 | 8.3円/kWh | 6年 |
前半が高いのは、経済産業省が「国民負担には中立的な形で、投資回収の早期化を図る」と説明している設計です。10年間の合計は24円×4年+8.3円×6年=145.8円で、一律15円を10年続けた場合の150円とほぼ同じ水準です。総額を変えずに、受け取る時期だけを前に寄せています。
標準の試算に入れている14.58円はこの期間平均です。10年間の総額を見る分には平均値で問題ありませんが、年ごとの入り方は平均とは違います。 実際に受け取るのは1〜4年目が24円、5年目以降が8.3円なので、平均で積んだ試算より最初のうちは回収が早く、5年目以降は遅くなります。前の見出しの感度の表に24円の行と8.3円の行を両方載せたのは、この2つの答えが同じ家から出ることを示すためです。期間ごとの総額は太陽光売電収入計算が出します。区分と期間の一覧は売電単価の年度別一覧に載せています。
もう1つ、前提として押さえるべきことがあります。11年目以降、FITの単価は消えます。 当サイトの回収年数計算は2年目以降も同じ売電単価が続く前提で積んでいるので、上の「14年目」は卒FITを織り込んでいない下限の値です。卒FIT後に売電先を選び直した単価で年間便益を作り直せば、回収はここからさらに遅れます。20年・30年の回収を語りながら10年目の境界を数えないのは、式の前提として雑です。
維持費と劣化率はどこまで織り込むか
維持費には2種類の入れ方があります。
想定値で入れる。 調達価格等算定委員会は住宅用の運転維持費を0.30万円/kW/年と想定しています。5kWなら年15,000円です。上の標準条件はこれを使いました。
実費を年按分して入れる。 同じ委員会のヒアリングでは、5kW想定で定期点検が約3.8万円/回(3〜5年ごと)、パワーコンディショナ交換が38.4万円程度(20年間で一度)とされています。点検を5年ごと、交換を20年で1回とすると、
38,000円 ÷ 5年 = 7,600円/年
384,000円 ÷ 20年 = 19,200円/年
合計 26,800円/年 ← 想定値の約1.8倍
これを年間維持費に入れると、回収は14年目→16年目に遅れます。
環境省のPDFには、劣化について4つの想定例が並んでいます。
- ①太陽光発電協会が、多数の国内メーカーの実例として0.27%/年を想定している
- ②メーカー各社のモジュール出力保証の範囲からは、0.5〜1%/年が見込まれる
- ③パワーコンディショナは、発電開始後10年間で急激に性能が劣化するといわれている
- ④「性能を維持するため定期的に補修・修繕を行うため、性能劣化を加味しないケースが多い」
この④が、他のサイトと数字がズレる理由そのものです。劣化を織り込まない計算が一般的だと、環境省自身が書いています。
上の表で標準に置いた0.27%は①の値で、②の下限(0.5%)よりも小さい、いちばん楽観側の数字です。メーカーの保証書が「1年目は95%、2年目以降は毎年0.5%」と書いてあるなら、その値を入れてください。維持費に実費の26,800円/年を入れた行で劣化率を1%/年に置き換えると、回収は16年目→17年目にもう1年遅れます。
なお、パワーコンディショナに関する費用は、維持費と劣化率のどちらか一方にしか書けません。上の表では交換費用を維持費の年按分として入れ、劣化率にはパネルの出力低下だけを入れています。同じ費用を両側に載せると回収年数は実際より遅く出るので、どちらか一方に寄せるのが表の読み方です。
補助金とローンで判定を変える
補助金は年間便益を1円も増やさず、分母の自己負担額だけを動かします。標準の家に30万円の補助金を入れると回収は14年目→11年目、20年目の累積収支は604,585円→904,585円です。太陽光ROI計算で利回りが改善して見えるのはこの動きそのもので、補助金は投資の質を上げているのではなく、支払いを誰が負うかの配分を変えているだけです。
ローンは入れ方を間違えやすいです。年間の返済額をそのまま年間便益から引くと、元本の返済は初期投資額の支払いと同じお金なので二重に引くことになります。織り込むのはその年に払う利子だけでいいので、利子相当額を年間維持費の入力欄に足して計算してください。金利は金融機関ごとに違うので、当サイトの計算機は既定値を置いていません。自分の契約の金利を入れて初めて、他の家の試算と同じ土俵に載ります。
「元が取れるか」の判定は、次の順で固めます。
- 補助金控除後の自己負担額を決める(見積もりは幅で持つ)
- 発電量を容量から試算し、売電量と自家消費量に分ける
- 売電収入を1〜4年目と5年目以降で分けて積む
- 電気代削減額を家の請求書ベースで出す
- 維持費は実費の年按分、劣化率は保証書の値で入れる
- 試算期間を調達期間(10年)より長く取り、11年目の境界を意識する
試算の順番と当サイトの計算機
上の6つは、そのまま当サイトの計算機の順番です。
- 太陽光年間発電量計算で容量と地域から年間発電量を出す
- 太陽光売電収入計算で、二段単価込みの年間売電収入を出す
- 太陽光電気代削減額計算で、自家消費による年間削減額を出す
- 太陽光投資回収年数計算で1〜3の結果と維持費・劣化から、何年目に黒字化するかの年次表を見る
- 太陽光ROI計算で、同じ前提の年間利回りと期間ROIを出す
- お金以外の評価として、太陽光CO2削減量計算で排出係数を4通り比べる
4番と5番は入力欄が1対1に対応しています。回収年数とROIが同じ前提から出ていると、計算の途中で前提をずらしたことに気づけます。多くの試算ページは式1本と固定算例1つで終わっていて、前提を変えたときの幅を見せていません。
出典・データソース
- A
[meti-santeii-2026-system-cost] 経済産業省 調達価格等算定委員会
令和8年度以降の調達価格等に関する意見(調達価格等算定委員会 令和8年2月5日)太陽光のシステム費用(万円/kW、2026年度想定値は「別紙1」の資本費表): 住宅用(10kW未満)25.5万円/kW(運転維持費0.30万円/kW/年・設備利用率13.7%・余剰売電比率70.0%)。事業用地上設置 10kW以上50kW未満 15.8万円/kW、50kW以上 12.9万円/kW(土地造成費 想定0.9→実測平均1.84/中央1.21万円/kW、接続費 想定1.35→平均2.15/中央1.45万円/kW)。事業用屋根設置 10kW以上 15.0万円/kW。2025年設置の定期報告実測(単純平均): 住宅用新築 28.9万円/kW(中央29.4)、地上設置10kW以上 20.3万円/kW(中央19.7)、屋根設置10kW以上 20.8万円/kW(中央18.5)。システム費用の内訳: パネル約47%・工事費約29%(住宅用新築)/パネル約33%・工事費約33%(地上設置)/パネル約38%・工事費約32%(屋根設置)。維持費ヒアリング: 5kW想定で定期点検 約3.8万円/回(3〜5年ごと)、パワコン交換 38.4万円程度(20年間で一度)
アクセス日:2026-09-17
- A
[moe-taiyoko-nyuka-kanren] 環境省
太陽光発電の導入見込量と関連情報について(PDF)p.9「太陽光発電設備の劣化」: 「太陽光発電モジュール、その他関連設備の経年劣化により、出力が低下する可能性がある。また、パワーコンディショナは発電開始後10年間で急激に性能が劣化するといわれており、定期的な補修、修繕が望まれる」。「太陽光発電設備の劣化に関する想定例」4項目: ①一般社団法人太陽光発電協会は、多数の国内メーカーの実例として0.27%/年の劣化率を想定(経済産業省「調達価格等算定委員会(第3回)」資料3)。②太陽電池メーカー各社の太陽電池モジュール出力保証範囲からは0.5~1%/年の劣化率が見込まれる。③パワーコンディショナは発電開始後10年間で急激に性能が劣化するといわれている。④性能を維持するため定期的に補修・修繕を行うため、性能劣化を加味しないケースが多い。→ 劣化率の入力欄の選択肢は 0.27%(JPEA実例)/0.5〜1%(メーカー保証範囲)。なお④のとおり「劣化を加味しない計算」が一般的なので、劣化あり/なしの両方を出して差を見せる
アクセス日:2026-09-18
- A
[enecho-fit-kakaku] 資源エネルギー庁
買取価格・期間等(2026年度以降)電源別の調達価格・調達期間と ※1〜※17 の注記。表は rowspan を使うため列の読み違えに注意
アクセス日:2026-09-08
この記事が参照するデータ
よくある質問
- Q. 太陽光発電は何年で元が取れますか
- A. 何の前提を入れるかで決まります。当サイトの標準条件(東京・5kW・自己負担127.5万円・年間維持費1.5万円・劣化0.27%/年)では、14年目に累積収支がプラスに転じます。同じ家でも維持費を引かなければ12年目、定期点検とパワーコンディショナ交換を実費で年按分すると16年目、補助金30万円が入ると11年目です。
- Q. 10年で元が取れるという試算とは何が違いますか
- A. 式に入れる費用の違いです。年間維持費を引かない、売電単価を1〜4年目のまま全期間に適用する、この2つを同時に満たすと試算は一気に早くなります。どちらが効いているかを切り分けるために、このページでは因子を1つずつ動かした表を載せています。
- Q. ローンを組むと回収は遅くなりますか
- A. 遅くなります。ただし引き方に注意が必要です。年間の返済額をそのまま年間便益から引くと、元本の返済は初期投資額の支払いと同じお金なので二重に引くことになり、回収年数が実際より遅く出ます。織り込むのはその年に払う利子だけでいいので、年間維持費の入力欄に利子相当額を足して計算してください。
- Q. 卒FIT後はどう織り込めばいいですか
- A. 住宅用(10kW未満)の調達期間は10年なので、11年目以降はFITの買取単価は消えます。当サイトの回収年数計算は11年目以降も同じ売電単価が続く前提で積んでいるため、卒FITを織り込むには、売電先を選び直したときの単価で年間売電収入を計算し直し、その年を境に便益を分けて入れる必要があります。11年目以降の下落まで入れた試算は、このページの表より遅い答えになります。