FITとFIPの違い|住宅用はどの制度で売電するのか
FITとFIPの違いを、住宅用太陽光の所有者が自分の売電にどう影響するかという問いから整理します。資源エネルギー庁の一次情報に住宅という語が0回であること、10kW未満の2026年度単価24円と8.3円を出典つきで示します。
FITとFIPは何が違う制度か
太陽光発電の売電制度は2つあります。FIT(固定価格買取制度)とFIP制度です。名前は似ていますが、収入の決まり方が根本的に違います。
- FIT:電力会社が、国が定めた単価で電気を買い取る。売電収入は「調達価格 × 売電量」で決まり、電気の市場価格がどう動いても受け取る額は変わりません
- FIP:資源エネルギー庁の解説では「市場価格をふまえて一定のプレミアムを交付する制度」とされています。市場で売った収入に上乗せがかかる形で、収入は市場価格に連動して動きます
FIPの位置づけについて、同じ解説ページは再生可能エネルギーが自立していくためのステップだと説明しています。FIT制度から、ほかの電源と共通の環境の下で競争する状態へ移るまでの途中経過、という考え方です。
法律の名前が2022年に変わった
制度の根っこにある法律の名前が、令和4年(2022年)4月1日に変わっています。
- 変更前:電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法
- 変更後:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法
「調達」という語が外れ、「利用の促進」に置き換わりました。電力会社に買い取らせる制度から、発電した電気を市場で売ることを前提にした制度へ重心が移ったことが、名前の変わり方にも表れています。FIPはこの改正で追加された仕組みです。
FIPは市場価格にプレミアムを上乗せする
FIPで交付されるプレミアムは、電気の市場価格をふまえて決まります。市場価格が高い月も低い月も、発電事業者の受け取る額がある水準に近づくように差額を調整する形です。
この調整にはFITに無い性質があります。収入が市場価格に連動するので、電気の価値が高い時間帯に発電を寄せる動機が働きます。FITは買取価格が固定なので、この動機は生まれません。
住宅所有者の問いへの答え
このページを検索して訪れる方の多くは、制度の解説よりも次の1点を知りたいはずです。
自分の家の売電はFIPになるのか。単価はどう変わるのか。
一次情報に住宅という語は0回
当サイトは資源エネルギー庁のFIP制度解説ページ(令和2年度改正)を取得し、本文を確認しました。結果は次のとおりです。
- 「住宅」という語:0回
- 「選択」という語:0回
- 「規模」という語:0回
つまり、この一次情報は住宅用の太陽光発電を名指ししていません。FIPの解説記事の多くは「住宅用はFIPの対象外」と書いていますが、当サイトが取得した範囲では、その断定を支える文はこのページに存在しません。
したがってこの記事では、確認できたことだけを書きます。
- 住宅用(10kW未満)の売電単価は、FITの調達価格表に数字として載っています → 2026年度の調達価格表
- FIPのプレミアム(参照価格)の数値は、取得したページの本文には載っていません。同じページからリンクされたPDF資料側にあります。確認できていないので、当サイトは数値を書きません
2026年度の住宅用売電単価
確認できている数字から並べます。2026年度の太陽光の調達価格は次のとおりです。
| 区分 | 出力 | 単価 | 適用される期間 |
|---|---|---|---|
| 住宅用 | 10kW未満 | 24円/kWh | 1〜4年目 |
| 住宅用 | 10kW未満 | 8.3円/kWh | 5〜10年目 |
| 事業用(屋根設置) | 10kW以上 | 19円/kWh | 1〜5年目 |
| 事業用(屋根設置) | 10kW以上 | 8.3円/kWh | 6〜20年目 |
| 事業用 | 10kW以上50kW未満 | 9.9円/kWh | 一定 |
| 事業用(地上設置) | 50kW以上 | 9.6円/kWh | 一定 |
住宅用は前半4年が高く、後半6年が低い二段構成で、調達期間は10年間です。10年間を通した平均は14.58円/kWhになります。
前半4年が高い二段構成の狙い
経済産業省はこの設計の理由を「国民負担には中立的な形で、投資回収の早期化を図る」と説明しています。これは検算できます。
住宅用 10年間の単価の合計 = 24円 × 4年 + 8.3円 × 6年
= 96円 + 49.8円
= 145.8円
10年間の平均単価 = 145.8 ÷ 10 = 14.58円/kWh
一律15円/kWhを10年続けた場合の合計は150円です。145.8円と150円はほぼ同じ水準で、10年間の総額はほとんど変えずに、受け取るタイミングだけ前にずらしたことが分かります。総額が増えていないので、電気を使う側が払う賦課金も増えません。賦課金の単価がどう決まるかは賦課金単価の算定式に整理してあります。
実務上いちばん効くのは、5年目以降の8.3円だけを見て「採算が合わない」と判断しないことです。前半4年分の積み上げを見落とします。逆に10年間ずっと24円で計算すると、収入を大きく見積もりすぎます。
10kWが境界になる場面
住宅用と事業用を分ける境界は10kWです。この数字は単価の表だけでなく、別の制度でも境界になっています。
廃棄等費用積立制度は10kW以上が対象
太陽光パネルの廃棄費用をあらかじめ積み立てる廃棄等費用積立制度は、10kW以上のすべての太陽光発電のFIT・FIP認定事業を対象にします。原則として、売電収入から源泉徴収のように外部へ積み立てる形です。
対象が「10kW以上」なので、10kW未満の住宅用はこの積立の対象外になります。これはFIP制度の解説ページに明記されている内容で、当サイトが逐字で確認しました。
同じ解説ページには、認定後に一定期間運転を開始しないと認定が失効する認定失効制度も書かれています。こちらも導入の規模や事業性を前提にした規定で、FIT・FIPの認定事業が対象です。
売電単価でも積立制度でも同じ10kWが境界になるので、10kWをまたぐと制度が変わると考えておくと安全です。設置容量そのものの決め方は容量目安の検算手順で扱っています。
FIPに移行するときに必要な手続き
FITからFIPへ移るには、申請すれば自動的に切り替わるわけではありません。取得した一次情報に書かれている手順は次のとおりです。
- あらかじめ電力会社へ「発電量調整供給契約」を申し込む
- FIP認定申請書に、その発電量調整供給契約申込書の写しを添付する
- 切り替わる時期は、FIP認定の通知以降、かつ発電量調整供給契約を開始した日後
発電量調整供給契約は、発電量の調整に関わる電力会社との契約です。この契約を先に結ぶことが前提になっているので、手続きは認定申請だけでは完結しません。
なお、50kW未満の太陽光発電設備の認定申請の窓口は、JPEA代行申請センター(JP-AC)です。住宅用はこの範囲に入ります。
プレミアムの数値は確認できていない
FIPでもらえるプレミアムがいくらになるかは、導入を検討している方にとって一番気になる数字のはずです。それでも当サイトはその数値を掲載しません。
理由は出典の確認範囲です。取得したFIP制度解説ページの本文には、参照価格やプレミアムの算定式の数値が入っていません。数値は同じページからリンクされたPDF資料側にあります。PDFを取得して逐字で確認していない値を書くことはしないので、この記事では制度の仕組みの説明までに留めます。
売電と自家消費のどちらが得か
単価が確定しているFIT側では、売るより自分で使うほうが得という計算ができます。
自家消費した1kWhの価値は、電力量料金単価ではありません。電気料金の4層のうち使用電力量に比例するのは、電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の後ろの3層です。この3層を合わせた額が「買わずに済んだ単価」になります。
2026年9月分・東京電力 従量電灯B・月400kWhの世帯に当てると:
40.49円 電力量料金(第3段階)
+(▲10.96円) 燃料費調整額
+ 4.18円 再エネ賦課金
――――――――――――――――――――――
= 33.71円/kWh
各層の単価の出典は買い替え回避の3層にあります。33.71円を売電単価と比べると次のとおりです。
| 比べる相手 | 単価 | 自家消費したときの倍率 |
|---|---|---|
| 住宅用 5〜10年目 | 8.3円/kWh | 4.06倍 |
| 住宅用 10年平均(当サイト算出) | 14.58円/kWh | 2.31倍 |
| 住宅用 1〜4年目 | 24円/kWh | 1.40倍 |
5年目以降は4倍の差です。同じ1kWhを8.3円で売るのと、33.71円の買い替えを回避するのとでは、手元に残る金額がまったく違います。前半4年の24円と比べても自家消費が上ですが、差は1.40倍まで縮まります。
同じ発電量でも合計便益が変わる
年間発電量5,000kWh・総消費電力量4,500kWhの世帯で、自家消費量だけを変えてみます。売電単価は10年平均の14.58円、買わずに済んだ単価は33.71円です。
| 自家消費量 | 売電量 | 売電収入 | 節約額 | 合計便益 |
|---|---|---|---|---|
| 1,500kWh | 3,500kWh | 51,030円 | 50,565円 | 101,595円 |
| 2,500kWh | 2,500kWh | 36,450円 | 84,275円 | 120,725円 |
自家消費を1,000kWh増やすと売電収入は14,580円減りますが、節約額は33,710円増えます。差し引き19,130円の増です。
売電単価を5年目以降の8.3円に置き換えると、自家消費1,500kWhの場合の合計便益は79,615円まで下がります。14.58円のときより21,980円の減です。単価が下がる後半6年ほど、自家消費の比重を上げる効果が大きくなります。
この計算は売電量と自家消費量に分けるでそのまま試せます。年間発電量がまだ固まっていないときは、先に発電量の試算から始めるでパネル容量と日射量から出してください。
住宅ユーザーが読まなくてよい概念
FIPの解説には、発電事業者向けの規定が多く出てきます。当サイトが一次情報で確認できたのは次の3つで、いずれも10kW未満の住宅用FITの売電額を計算するときには登場しません。
- 廃棄等費用積立制度:10kW以上のFIT・FIP認定事業が対象。住宅用の10kW未満は対象外
- 認定失効制度:認定後、一定期間内に運転を開始しないと認定が失効する
- 系統増強費用の賦課金方式:送電線の増強費用の一部を、賦課金の方式で全国で支える仕組み
一方、参照価格・プレミアム・バランシングコスト・非化石価値といった語はFIPの解説記事で頻出しますが、当サイトは取得した一次情報の本文で定義を確認できませんでした。したがってこの記事では定義を書きません。住宅用の売電収入を試算するときにこれらの値が必要になることはなく、必要なのはFITの調達価格だけです。
自分の売電単価を確かめる手順
最後に、ご自身のケースに当てはめる手順です。
- 設置容量が10kW未満かどうかを確認する。未満なら住宅用の区分です
- 認定を受けた年度を特定する。調達価格は認定を受けた年度の価格が調達期間の終わりまで適用されるので、今の価格表ではなくその年度の価格表を当てます
- 調達期間の何年目かを数える。住宅用の2026年度認定なら、1〜4年目が24円、5〜10年目が8.3円です
- 年間発電量のうち自家消費した分を引いて、売電量を出す
- 売電量に単価を掛けて売電収入を出す。自家消費した分には買わずに済んだ単価を掛けて、2つを足す
2027年度以降は事業用の地上設置がFIT・FIPの新規認定の対象から外れます。事業用の導入を予定している場合は、この年度区分の確認が前提になります。
売電と自家消費の配分をまとめて試算したいときは、太陽光の計算ツール一覧から入ると必要な計算機がそろっています。
出典・データソース
- A
[enecho-fip-r2] 資源エネルギー庁
再エネ特措法改正関連情報 令和2年度改正|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギーFIP制度の一次定義。「固定価格で買い取る制度(FIT制度)に加えて、新たに、市場価格をふまえて一定のプレミアムを交付する制度(FIP制度)を創設」。令和4年4月1日施行で法律名が「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」→「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に変更。FIP制度は「再エネ自立化へのステップとして、電力市場への統合を促しながら、投資インセンティブが確保されるように支援する制度」で、各要素は「FIT制度から他電源と共通の環境下で競争するまでの途中経過」と位置づけ。廃棄等費用積立制度は「10kW以上のすべての太陽光発電のFIT・FIP認定事業」を対象とし原則 源泉徴収的な外部積立て。認定失効制度は認定後一定期間内に運転開始しない場合に認定を失効。系統増強費用の一部を賦課金方式で全国で支える制度も同時に創設。FIT⇒FIP移行手続は FIP認定申請書に発電量調整供給契約申込書(写)を添付。⚠️ 表は 0 個 —— 数値(参照価格の計算方法・プレミアム算定)は同ページの PDF 資料側にあり、本文には無い。数値を引用するなら PDF を別に取得して確認すること
アクセス日:2026-09-09
- A
[enecho-fit-kakaku] 資源エネルギー庁
買取価格・期間等(2026年度以降)電源別の調達価格・調達期間と ※1〜※17 の注記。表は rowspan を使うため列の読み違えに注意
アクセス日:2026-09-08
- A
[meti-fit-surcharge-2026] 経済産業省
再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します2026年度 賦課金単価 4.18円/kWh、需要家モデル 400kWh、算定根拠の3数値。2026年度以降の買取価格も同一発表
アクセス日:2026-09-08
この記事が参照するデータ
よくある質問
- Q. 住宅用の太陽光発電はFIPに移行しますか
- A. 当サイトが取得した資源エネルギー庁のFIP制度解説ページ(令和2年度改正)の本文には「住宅」という語が1回も出てきません。住宅用を対象にする、あるいは対象外にするという記述もありません。したがって「移行する」「移行しない」のどちらも一次情報からは確定できず、この記事では断定していません。確定しているのは、住宅用10kW未満の売電単価がFITの調達価格表に数字として載っているという点です。
- Q. FITとFIPはどちらが売電収入が多くなりますか
- A. 比較できません。FIPでもらえるプレミアム(参照価格との差額)の数値が、当サイトの取得した一次情報の本文に載っていないためです。数値は同じページからリンクされたPDF資料側にあります。一方、FITの調達価格は2026年度分が公表されており、住宅用10kW未満は1〜4年目が24円/kWh、5〜10年目が8.3円/kWh、調達期間は10年間です。
- Q. 10kW未満と10kW以上で何が変わりますか
- A. 2026年度は少なくとも2つの場面で10kWが境界になっています。1つは調達価格で、10kW未満の住宅用は24円と8.3円の二段・調達期間10年、10kW以上の事業用は区分によって19円と8.3円の二段(20年)・9.9円・9.6円に分かれます。もう1つは廃棄等費用積立制度で、こちらは10kW以上のすべての太陽光発電のFIT・FIP認定事業が対象なので、10kW未満は対象外です。
- Q. 2026年度の住宅用売電単価はいくらですか
- A. 10kW未満の住宅用は24円/kWh(1〜4年目)と8.3円/kWh(5〜10年目)の二段構成で、調達期間は10年間です。10年間を通した平均は14.58円/kWhになります(24円×4年+8.3円×6年=145.8円、÷10年の当サイト算出値で、公表値ではありません)。
- Q. 再エネ賦課金とFITの買取価格の違いは何ですか
- A. お金の流れる向きが逆です。FITの買取価格は電気を売る側が受け取る単価で、設備が認定された年度の価格が調達期間の終わりまで固定されます。再エネ賦課金は電気を買う側が払う単価で、2026年度は4.18円/kWh、毎年5月分から切り替わります。同じ制度から来ていますが、数値も改定のタイミングも別です。